さまざまのあはれをこめて梢吹く
風に秋知る深山辺の里
- 歌の意味
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さまざまなしみじみとした情趣をこめて梢を吹く風によって、秋が来たことを知る深山のほとりの里である。
- 鑑賞
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秋歌 254
詞書「山家初秋」
詞書「山家初秋」は、山里の住まいで迎える初秋を詠む題である。深い山のほとりの里では、梢を吹きわたる風の中にさまざまなあわれがこもっていて、その風によって秋の訪れを知る、と詠む。秋の部の巻頭に置かれた一首で、目に見える景色よりも先に、風の気配で季節の変わり目を感じ取る山里の暮らしを示している。
夏の部の巻末である巻第二の第二百五十三首が、早くも秋めいて涼しい風を詠んで結ばれていたのを受け、秋の部もまた風から始まっている。季節の境を風によって受け渡す配列である。
初句「さまざまの」は、ひとつではない、いろいろな、の意で、二句の「あはれ」にかかり、秋の情趣の多様さを示している。
二句「あはれをこめて」の「あはれ」は、しみじみと心を動かす情趣をいう。それを風がこめて吹く、と風に心があるかのように詠んでいる。
三句「梢吹く」は、木々の枝先を吹きわたることで、山里の高い木々を渡る風の音を思わせる。
四句「風に秋知る」は、風によって秋の到来を知る、の意で、格助詞「に」が手段や原因を示す。次歌の「風のけしきに」と同じく、風を秋の知らせとしている。
結句「深山辺の里」は体言止めで、詠み手の住む山里を示して結ぶ。この結句は本巻の第三百一首、第四百二十七首、第四百七十四首でも用いられ、秋の深まりにつれて同じ里の姿が繰り返し詠まれている。
こずゑ:木の幹や枝の先の部分
みやまべ:奥深い山のほとり、山の近く
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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禊して幣切り流す川の瀬に やがて秋めく風ぞ涼しき
- 次の歌
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秋立つと人は告げねど知られけり 深山の裾の風のけしきに