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急ぎ起きて庭の小草の露踏まん
やさしき数に人や思ふと

歌の意味
急いで起きて庭の小草の露を踏もう。風流を解する人の数に、人が入れてくれるかと思って。
鑑賞
秋歌 258

詞書「七夕」
 詞書「七夕」の題で詠まれた歌で、七夕を詠む一連の一首目である。七夕の朝、急いで起きて庭の小草に置いた露を踏もう、そうすれば七夕を心にかける風雅な人の数に人も入れてくれるだろうか、と詠む。七夕の行事を自ら慕う気持ちを、人の目を意識する形で軽やかに表している。
 七夕の歌は二星の逢瀬そのものを詠むことが多いが、この歌は地上の自分の振る舞いに目を向けている。次歌以下、空の二星の心へと視点が移っていく一連の導入となっている。

 初句「急ぎ起きて」は六音の字余りで、朝早く急いで起き出す様子をいう。
 二句「庭の小草の」の「小草」は、小さな草をいい、その葉に置いた露へと続く。
 三句「露踏まん」の「ん」は意志の助動詞「む」で、露を踏もう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「やさしき数に」の「やさしき」は、優美で風雅である、の意で、風流を解する人の仲間に、という意味を表す。
 結句「人や思ふと」の「や」は疑問の係助詞で、人が思うだろうかと、と三句の行為の理由を示して倒置で結んでいる。

かず:ある仲間や部類の中に数えられること
こぐさ:小さな草
作者
西行
出典
山家集
前の歌
常よりも秋になるをの松風は わきて身にしむ心地こそすれ
次の歌
暮れぬめり今日待ちつけて七夕は うれしきにもや露こぼるらん