糸薄縫はれて鹿の臥す野辺に
ほころびやすき藤袴かな
- 歌の意味
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糸のように細い薄に縫い包まれるようにして鹿が臥している野辺に、ほころびやすい藤袴が咲いていることよ。
- 鑑賞
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秋歌 266
詞書「草花得時と云ふ事を」
詞書の題「草花得時」は、秋の草花が時を得て盛りを迎えるさまを詠むものである。糸のように細い薄の群れに縫い込まれるようにして鹿が臥している野辺に、つぼみのほころびやすい藤袴が咲いている、と詠む。盛りを迎えた秋の野の花を、衣を縫う糸や袴の縫い目にたとえて描いている。
「糸」「縫ふ」「ほころぶ」「袴」が縁語として結びつき、裁縫にちなむ言葉で野の景色を組み立てたところに技巧がある。前歌までの萩に続いて、薄と藤袴が取り上げられ、野の花の種類が広がっていく。
初句「糸薄」は、糸のように細い葉や穂をもつ薄をいう。「糸」は二句の「縫ふ」、四句の「ほころぶ」、結句の「袴」と縁語になる。
二句「縫はれて鹿の」の「縫はれて」は、薄の間に縫い込まれるように、の意で、鹿が薄の茂みに包まれて臥すさまを裁縫にたとえている。
三句「臥す野辺に」は、鹿が身を横たえる野辺に、の意である。
四句「ほころびやすき」の「ほころぶ」は、花のつぼみが開く意と、縫い目がほどける意とを掛けた掛詞で、藤袴の「袴」と結びついている。
結句「藤袴かな」は、秋の七草の一つである藤袴をいい、「かな」は詠嘆の終助詞で、盛りに咲き開く花への感動を表して結ぶ。
ほころぶ:花のつぼみが開く意と、縫い目がほどける意を掛ける
ふぢばかま:秋の七草の一つで、薄紫の小さな花を房状につける草
いとすすき:糸のように細い葉や穂をもつ薄
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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末葉吹く風は野もせにわたるとも 荒くは分けじ萩の下露
- 次の歌
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折らで行く袖にも露ぞこぼれける 萩の葉茂き野辺の細道