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乱れ咲く野辺の萩原分け暮れて
露にも袖を染めてけるかな

歌の意味
乱れ咲く野辺の萩原を分け歩くうちに日が暮れて、露によっても袖を萩の色に染めてしまったことだ。
鑑賞
秋歌 269

詞書「終日見野花」
 詞書「終日見野花」は、一日じゅう野の花を見て過ごすことを詠む題である。乱れ咲く野辺の萩原を、花を見ながら一日分け歩いて日が暮れ、萩の花の色が露とともに移って、袖まで染まってしまった、と詠む。花に心を奪われて一日を過ごした様子を、染まった袖によって表している。
 萩の露が袖に移るという趣向は、本巻の第二百六十四首、第二百六十七首の、袖に露がかかる歌と通じている。ここでは露が袖を濡らすだけでなく、花の色に染めるところまで進めている。

 初句「乱れ咲く」は、萩が入り乱れて咲いているさまをいう。
 二句「野辺の萩原」は、萩が一面に茂った野辺をいう。
 三句「分け暮れて」は、分け入って歩くうちに日が暮れて、の意で、題の「終日」に当たる。
 四句「露にも袖を」の「も」は、花を見るだけでなく露によっても、の含みをもつ。
 結句「染めてけるかな」の「て」は完了、「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、袖まで花の色に染めてしまったことへの感慨を表して結ぶ。

わけくる:草木を分けて歩くうちに日が暮れる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
穂に出づる深山が裾の群薄 籬にこめて囲ふ秋霧
次の歌
咲き添はん所の野辺にあらばやは 萩より外の花も見るべき