今日ぞ知るその江に洗ふ唐錦
萩咲く野辺にありけるものを
- 歌の意味
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今日はじめて知った。あの江で洗うという唐錦は、萩の咲く野辺にあったのだなあ。
- 鑑賞
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秋歌 272
詞書「野萩似錦」
詞書「野萩似錦」は、野の萩が錦に似ているさまを詠む題である。江の水で洗って色を鮮やかにするという唐錦は、遠い異国にあるものと思っていたが、実はこの萩の咲く野辺にあったのだと、今日はじめて知った、と詠む。萩の咲き乱れる野の美しさを、名高い唐錦にたとえている。
「その江に洗ふ唐錦」は、中国の蜀の江で錦を洗うと色が鮮やかになったという、蜀江の錦の故事を踏まえるとみられる。萩の色の移る袖を詠んだ前歌までの流れを受け、野全体を錦に見立てるところまで広げている。
初句「今日ぞ知る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「知る」で結ぶ係り結びで、今日こそ知った、と気づきを強めている。ここで句切れとなる初句切れの歌である。
二句「その江に洗ふ」の「その江」は、錦を洗うことで知られる、あの江、の意で、蜀江の錦の故事を指すとみられる。
三句「唐錦」は、中国から渡来した美しい錦の織物をいい、ここで野の萩の見立てとなっている。
四句「萩咲く野辺に」は、萩の咲く野辺に、の意で、遠い異国の錦が身近な野辺にあったことを示す。
結句「ありけるものを」の「けり」は気づきの詠嘆、「ものを」は詠嘆を含む終助詞で、初句の「今日ぞ知る」の内容を倒置で後に示している。
からにしき:中国から渡来した錦の織物、また美しい錦
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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分けて入る庭しもやがて野辺なれば 萩の盛りを我がものに見る
- 次の歌
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茂り行きし原の下草尾花出でて 招くは誰を慕ふなるらん