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花薄心あてにぞ分けて行く
ほの見し道の跡しなければ

歌の意味
花薄の中を、見当をつけて分けて行く。かすかに見えた道の跡も、今はもう見えなくなっているので。
鑑賞
秋歌 274

詞書「薄当道繁」
 詞書「薄当道繁」は、薄が道に茂っているさまを詠む題である。穂を出した花薄が道一面に茂り、かつてかすかに見えていた道の跡もなくなってしまったので、見当をつけながら薄を分けて進んで行く、と詠む。薄に埋もれた野道を手探りのように進む姿を描いている。
 「ほの見し」に、ほのかに見たという意と、薄の「穂」とを掛け、花薄の縁でつないでいる。前歌の尾花に続いて薄を詠み、薄が道をふさぐさまへと焦点を移している。

 初句「花薄」は、穂の出た薄をいい、題の「薄」に当たる。
 二句「心あてにぞ」の「心あて」は当て推量、見当の意で、係助詞「ぞ」は三句の「行く」と係り結びをなす。
 三句「分けて行く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形で結び、薄を分けて進んで行く、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「ほの見し道の」の「ほの」は、ほのかに、の意と、初句の花薄の「穂」とを掛けた掛詞で、かすかに見えていた道の、の意となる。
 結句「跡しなければ」の「し」は強意の副助詞で、道の跡がないので、と三句の理由を倒置で後に示している。

ほのみる:ほのかに見る意と、薄の穂を掛ける
こころあて:当て推量、見当
作者
西行
出典
山家集
前の歌
茂り行きし原の下草尾花出でて 招くは誰を慕ふなるらん
次の歌
籬荒れて薄ならねど刈萱も 茂き野辺とも成りにけるものを