おしなべて木草の末の原までに
なびきて秋のあはれ見えけり
- 歌の意味
-
一様に、木や草の葉先が原の果てまで風になびいて、秋のしみじみとした情趣が目に見えることだ。
- 鑑賞
-
秋歌 286
詞書は前の歌に続き「荻」
前歌に続いて「荻」の題で詠まれた歌である。荻を吹く風が広がり、木も草もすべて一様に、その葉先が原の果てまでなびいて、秋のあわれが目に見える形になって現れている、と詠む。前歌で耳に聞いた荻の葉音の情趣を、この歌では目に見える景色として捉えている。
前歌が「聞こゆる」と聴覚で秋のあわれを捉えたのに対し、この歌は「見えけり」と視覚で捉えており、聞く秋と見る秋とが対になっている。
初句「おしなべて」は、すべて一様に、の意である。
二句「木草の末の」は、木や草の葉先の、の意で、風になびく部分を示している。
三句「原までに」は、原の果てまでも、の意で、なびく範囲の広がりを示している。
四句「なびきて秋の」は、風に従って揺れ動いて、の意で、荻の上を渡る風が野一面に及ぶさまを示す。
結句「あはれ見えけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、秋のあわれが目に見える姿となって現れていることに気づいた感動を表している。
おしなぶ:すべてを一様にする
こくさ:木と草
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
思ふにも過ぎてあはれに聞こゆるは 荻の葉乱る秋の夕風
- 次の歌
-
牡鹿伏す萩咲く野辺の夕露を しばしもためぬ荻の上風