あたりまであはれ知れとも言ひ顔に
荻の音こす秋の夕風
- 歌の意味
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あたりの家にまで、あわれを知れとでも言っているかのように、荻の葉音を送ってよこす秋の夕風であるよ。
- 鑑賞
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秋歌 288
詞書「隣夕荻風」
詞書「隣夕荻風」は、夕方、隣家の荻を吹く風を詠む題である。隣の家の荻を吹く秋の夕風が、こちらの家のあたりまで、秋のあわれを知れとでも言うかのように、荻の葉音を送ってよこす、と詠む。隣の荻の音が垣根を越えて届くさまを、風が人に語りかけるように詠んでいる。
本巻の第二百八十五首と同じ「秋の夕風」で結ばれ、荻を詠む一連を締めくくっている。第二百八十五首が荻の葉音を自ら聞き取って心を動かしたのに対し、この歌は風の方から荻の音を届けてくると詠み、聞く側と届ける側とを入れ替えている。
初句「あたりまで」は、周囲の家々にまで、の意で、題の「隣」に当たる。
二句「あはれ知れとも」の「知れ」は命令形で、あわれを知れ、と風が人に呼びかけるかのように言っている。
三句「言ひ顔に」は、言っているような顔つきで、の意で、風を擬人化している。
四句「荻の音こす」の「こす」は、よこす、送ってくる、の意で、隣の荻の葉音を垣根越しに届けるさまをいう。
結句「秋の夕風」は体言止めで、題の「夕」と「風」に当たり、本巻の第二百八十五首の結句と同じ句で結んでいる。
いひがほ:言っているような顔つき、様子
こす:よこす、送ってくる
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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牡鹿伏す萩咲く野辺の夕露を しばしもためぬ荻の上風
- 次の歌
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吹き渡す風にあはれをひとしめて いづくもすごき秋の夕暮