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ほに出でて篠の小薄招く野に
たはれて立てる女郎花かな

歌の意味
穂を出して、思いを表に現すように篠の小薄が招いている野に、戯れるように立っている女郎花であることよ。
鑑賞
秋歌 297

詞書は前の歌に続き「人々秋歌十首詠みけるに」
 秋歌十首の一連の二首目である。篠の小薄が穂を出して、思いを表に現すように風に揺れて招いている野に、女郎花がその招きに戯れるように立っている、と詠む。薄を招く男に、女郎花を戯れる女になぞらえ、秋の野の草花を恋の情景に見立てている。
 「ほに出でて」に、薄が「穂に出る」意と、思いが「表に現れる」意とを掛けている。本巻の第二百七十三首の尾花が誰を招くのかと問うた歌と通じ、ここではその招きに応じる女郎花が描かれている。また結句「女郎花かな」は、第二百七十八首から続いた女郎花の歌の結句と同じである。

 初句「ほに出でて」の「ほ」は、薄の「穂」と、表に現れる意の「ほ」とを掛けた掛詞で、穂を出して、また思いを表に現して、の両意を表す。
 二句「篠の小薄」は、篠竹のように細い小さな薄をいい、「小」は接頭語である。
 三句「招く野に」は、薄の穂が風に揺れるさまを手招きに見立て、招いている野に、の意である。
 四句「たはれて立てる」の「たはる」は、戯れる、色めかしくふるまう、の意で、女郎花を艶めいた女性になぞらえている。
 結句「女郎花かな」は、「かな」で詠嘆して結び、薄の招きに戯れる女郎花の姿を示している。

ほ:薄の「穂」と、表に現れる意の「ほ」を掛ける
たはる:戯れる、色めかしくふるまう
をすすき:小さな薄
作者
西行
出典
山家集
前の歌
玉に貫く露はこぼれて武蔵野の 草の葉結ぶ秋の初風
次の歌
花をこそ野辺のものとは見に来つれ 暮るれば虫の音をも聞きけり