晴れやらぬ深山の霧の絶え絶えに
ほのかに鹿の声聞こゆなり
- 歌の意味
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晴れきらない深山の霧の切れ間から、とぎれとぎれに、かすかに鹿の声が聞こえてくるようだ。
- 鑑賞
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秋歌 300
詞書は前の歌に続き「人々秋歌十首詠みけるに」
秋歌十首の一連の五首目である。晴れきらずに立ちこめている深山の霧の、ところどころの切れ間から、鹿の鳴く声がとぎれとぎれに、かすかに聞こえてくる、と詠む。目には見えない鹿の存在を、霧を通して届く声によって捉えている。
十首の一連は、草花、虫、荻と続いてここで鹿が登場する。霧に隔てられて姿の見えない鹿を声で捉える趣向は、本巻の第四百三十八首の「霧にまがひて鳴く鹿の声かすかなる」とも通じている。
初句「晴れやらぬ」の「やる」は、すっかり〜しきる、の意で、打消の「ぬ」と合わせて、晴れきらない、の意となる。
二句「深山の霧の」は、奥深い山に立ちこめる霧の、の意である。
三句「絶え絶えに」は、とぎれとぎれに、の意で、霧の切れ間と、そこから届く声の途切れとを同時に表している。
四句「ほのかに鹿の」は、かすかに鹿の、の意で、霧に隔てられた声の遠さを示している。
結句「声聞こゆなり」の「なり」は、音や声によって推定する助動詞で、鹿の声が聞こえてくるようだ、と結んでいる。
たえだえ:とぎれとぎれであるさま
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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荻の葉を吹き過ぎて行く風の音に 心乱るる秋の夕暮
- 次の歌
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かねてより梢の色を思ふかな 時雨はじむる深山辺の里