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鹿の音を垣根にこめて聞くのみか
月もすみけり秋の山里

歌の意味
鹿の声を垣根の内に閉じこめるようにして身近に聞くばかりか、月もここに住み、澄みわたっていることだ。秋の山里では。
鑑賞
秋歌 302

詞書は前の歌に続き「人々秋歌十首詠みけるに」
 秋歌十首の一連の七首目である。秋の山里では、鹿の声を垣根のすぐそばで、まるで垣根の内に閉じこめたかのように身近に聞くばかりでなく、月までもこの里に住んで、澄んだ光を照らしている、と詠む。鹿の声と月の光という秋の情趣を一身に受ける山里住まいの喜びを表している。
 「すみ」に「住み」と「澄み」とを掛けている。前歌が時雨に紅葉を待つ里を詠んだのに対し、この歌は鹿の声と月に満たされた里を詠む。結句「秋の山里」は、本巻の第三百十八首、第四百三十五首、第四百七十六首でも用いられ、秋の山里の趣がさまざまに詠まれている。

 初句「鹿の音を」は、鹿の鳴く声を、の意である。
 二句「垣根にこめて」は、垣根の内に閉じこめるように、の意で、鹿の声がすぐ近くに聞こえるさまを示す。
 三句「聞くのみか」の「のみか」は、〜ばかりか、の意で、四句の「月も」へと続けて、山里の趣が重なることを示している。
 四句「月もすみけり」の「すみ」は、月が「澄む」意と、月がこの里に「住む」意とを掛けた掛詞で、「けり」は気づきの詠嘆である。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
 結句「秋の山里」は体言止めで、鹿の声と月の光に満たされた住まいを示して結ぶ。

すむ:光が澄む意の「澄む」と、そこに住む意の「住む」を掛ける
かきね:家の周りの垣
作者
西行
出典
山家集
前の歌
かねてより梢の色を思ふかな 時雨はじむる深山辺の里
次の歌
庵に漏る月の影こそさびしけれ 山田は引板の音ばかりして