なにとかく心をさへは尽くすらん
我が嘆きにて暮るる秋かは
- 歌の意味
-
どうしてこのように心までも尽くして思い悩むのだろうか。私の嘆きによって暮れていく秋だというのか、そうではないのに。
- 鑑賞
-
秋歌 305
詞書は前の歌に続き「人々秋歌十首詠みけるに」
秋歌十首の一連を結ぶ十首目である。どうしてこれほどまでに心をすり減らして思い悩むのだろうか、秋が暮れていくのは自分の嘆きのせいではないのに、と詠む。去りゆく秋を惜しむあまり心を尽くしてしまう自分を、反語によって省みている。
十首の一連は、初秋の風から始まり、草花、虫、荻、鹿、月と秋の景物を詠み進め、最後に秋の暮れを惜しむ自分の心を見つめて結ばれている。
初句「なにとかく」は、どうしてこのように、の意で、自分自身に問いかけている。
二句「心をさへは」の「さへ」は添加の副助詞で、心までも、の意である。
三句「尽くすらん」の「らん」は原因推量の助動詞で、思い悩むのだろうか、と問う。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「我が嘆きにて」は、自分の嘆きによって、の意で、秋が暮れる原因を問い返している。
結句「暮るる秋かは」の「かは」は反語の終助詞で、自分の嘆きで暮れていく秋だろうか、いやそうではない、と結んでいる。
こころをつくす:あれこれと思い悩む、気をもむ
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
わづかなる庭の小草の白露を 求めて宿る秋の夜の月
- 次の歌
-
秋の夜の空に出づてふ名のみして 影ほのかなる夕月夜かな