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うれしとや待つ人ごとに思ふらん
山の端出づる秋の夜の月

歌の意味
うれしいと、月を待つ人は誰もがみな思っているのだろうか。山の端から出てくる秋の夜の月を見て。
鑑賞
秋歌 308

詞書は前の歌に続き「月」
 前歌に続いて「月」の題で詠まれた歌である。山の端から秋の夜の月が出てくるのを見て、月の出を待っていた人は誰もがみな、うれしいと思っているのだろうか、と詠む。月の出を待ちわびた人々の喜びを思いやり、自らの喜びをそこに重ねている。
 前歌が空高く昇る月を詠んだのに対し、この歌は山の端から出る月を詠み、月の出の喜びを捉えている。次歌以下では、月を見ることの苦しさや、雲への恨みが詠まれていき、月に寄せる喜びと嘆きとが交互に現れる。

 初句「うれしとや」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と呼応する。
 二句「待つ人ごとに」は、月の出を待っている人それぞれが、の意である。
 三句「思ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、係助詞「や」を受けて連体形で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「山の端出づる」は、山の稜線から出てくる、の意である。
 結句「秋の夜の月」は体言止めで、本巻の第三百四首と同じ結句で、人々が待ちわびた月を示して結ぶ。

やまのは:山の稜線、空と接する山の端
作者
西行
出典
山家集
前の歌
天の原月たけのぼる雲路をば わきても風の吹き払はなん
次の歌
なかなかに心尽くすも苦しきに 曇らば入りね秋の夜の月