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いかばかりうれしからまし秋の夜の
月澄む空に雲なかりせば

歌の意味
どれほどうれしいことだろう。秋の夜の月が澄みわたる空に、もし雲がなかったならば。
鑑賞
秋歌 310

詞書は前の歌に続き「月」
 前歌に続いて「月」の題で詠まれた歌である。秋の夜の月が澄みわたる空に、もし雲というものがなかったならば、どれほどうれしいことだろう、と詠む。現実には雲が月を隠すことを嘆き、雲のない空を仮に想像する形で、月への思いを表している。
 前歌が雲に苦しむあまり月に入れと言ったのに対し、この歌は雲さえなければと願っており、月を隠す雲への恨みが続いている。「せば〜まし」の反実仮想を用いた歌である。

 初句「いかばかり」は、どれほど、の意で、二句の「うれしからまし」の程度を問う。
 二句「うれしからまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、結句の「せば」と呼応し、うれしいことだろうに、の意となる。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「秋の夜の」は、四句の「月」にかかる。
 四句「月澄む空に」は、月が澄んだ光を放つ空に、の意である。
 結句「雲なかりせば」の「せば」は過去の助動詞「き」の未然形に「ば」が付いた形で、もし雲がなかったならば、と現実に反する仮定を示し、二句の「まし」と呼応している。

すむ:光が曇りなく澄みわたる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
なかなかに心尽くすも苦しきに 曇らば入りね秋の夜の月
次の歌
播磨潟灘のみ沖に漕ぎ出でて あたり思はぬ月を眺めん