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明くるまで宵より空に雲なくて
またこそかかる月見ざりつれ

歌の意味
宵から夜が明けるまで、空に雲ひとつなくて、これほどの月はこれまで見たことがなかった。
鑑賞
秋歌 315

詞書は前の歌に続き「月」
 前歌に続いて「月」の題で詠まれた歌である。宵のうちから夜が明けるまで、一晩じゅう空に雲ひとつなかったので、これほどすばらしい月はこれまで見たことがなかった、と詠む。前の歌々で雲を厭い、月が入るのを惜しんできた心が、ここで雲のない一夜の月を見て満たされている。
 本巻の第三百十首が雲がなければどれほどうれしいかと願った歌であったのに対し、この歌はその願いがかなった一夜を詠んでおり、願いと実現とが対応している。

 初句「明くるまで」は、夜が明けるまで、の意で、二句の「宵より」と合わせて、一晩じゅう、の意を表す。
 二句「宵より空に」は、日が暮れて間もない宵のうちから空に、の意である。
 三句「雲なくて」は、雲がなくて、の意で、月を隠すものがなかったことをいう。
 四句「またこそかかる」の「また」は打消と呼応して、これまでに、の意を表し、係助詞「こそ」は結句の「つれ」と係り結びをなす。「かかる」は、このような、の意である。
 結句「月見ざりつれ」は、係助詞「こそ」を受けて完了の助動詞「つ」の已然形で結び、このような月は見たことがなかった、と強めている。

よひ:日が暮れて夜になって間もないころ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
慕はるる心や行くと山の端に しばしな入りそ秋の夜の月
次の歌
浅茅原葉末の露の玉ごとに 光つらぬく秋の夜の月