月ならでさし入る影のなきままに
暮るるうれしき秋の山里
- 歌の意味
-
月のほかには差し入ってくる光もないので、日が暮れるのがうれしい秋の山里である。
- 鑑賞
-
秋歌 318
詞書「閑待月」
詞書「閑待月」は、静かな住まいで月を待つことを詠む題である。山里の住まいには、月の光のほかに差し入ってくるものは何もないので、月の出る夜を待って、日が暮れるのがうれしく思われる、と詠む。人の訪れもない静かな山里で、月だけを楽しみに待つ心を表している。
「影」は光の意であるが、訪れる人の姿の意も響かせ、人の訪れのない閑居であることを示している。結句「秋の山里」は本巻の第三百二首と同じで、そこでは月がこの里に住むと詠まれていた。
初句「月ならで」の「ならで」は、〜でなくて、の意で、月でなくて、月のほかには、の意である。
二句「さし入る影の」の「影」は光の意で、住まいに差し込んでくる光の、の意である。
三句「なきままに」は、ないので、ないのにまかせて、の意で、四句の理由を示している。
四句「暮るるうれしき」は、日が暮れるのがうれしい、の意で、月の出る夜を心待ちにする気持ちを表す。
結句「秋の山里」は体言止めで、題の「閑」に当たる静かな住まいを示して結ぶ。
かげ:光、また人や物の姿
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
秋の夜の月を雪かとまがふれば 露も霰の心地こそすれ
- 次の歌
-
清見潟月澄む空の浮雲は 富士の高嶺の煙なりけり