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なべてなほ所の名をや惜しむらん
あかしはわきて月のさやけき

歌の意味
総じてやはり、月はその土地の名を大事に惜しむのだろうか。明石では、その名のとおりとりわけ月が明るく冴えている。
鑑賞
秋歌 325

詞書は前の歌に続き「名所月」
 前歌に続いて「名所月」の題で詠まれた歌である。月というものは総じて、やはりその土地の名に恥じないようにと名を惜しむのだろうか、明石という所では、その名のとおりとりわけ月が明るく澄んでいる、と詠む。地名の明石に「明かし」を掛け、名所の名と月の明るさとを結びつけた機知の歌である。
 前歌の清見潟に続いて、播磨国の明石という名所の月が詠まれる。明石の月は本巻の第三百七十六首でも詠まれている。

 初句「なべてなほ」の「なべて」は総じて、一般に、「なほ」はやはり、の意である。
 二句「所の名をや」は、その土地の名を、の意で、「や」は疑問の係助詞で三句の「らん」と呼応する。
 三句「惜しむらん」は、名を惜しむのだろうか、の意で、名に恥じないようにと大事にすることをいう。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「あかしはわきて」の「あかし」は、地名の「明石」と、明るい意の「明かし」とを掛けた掛詞で、「わきて」はとりわけ、の意である。
 結句「月のさやけき」の「さやけし」は、明るく澄んでいる、の意で、連体形で止めて余情を残している。

あかし:播磨国の地名「明石」と、明るい意の「明かし」を掛ける
なをしむ:名声や評判が損なわれるのを惜しむ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
清見潟沖の岩越す白波に 光をかはす秋の夜の月
次の歌
難波潟月の光に浦冴えて 波の面に氷をぞ敷く