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蓬分けて荒れたる庭の月見れば
昔住みけん人ぞ恋しき

歌の意味
蓬を分けて入り、荒れ果てた庭の月を見ていると、昔ここに住んでいたであろう人が恋しく思われる。
鑑賞
秋歌 341

詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
 月の歌の一連の五首目である。蓬の生い茂る中を分けて入り、荒れ果てた庭を照らす月を見ていると、かつてここに住んでいたであろう人のことが恋しく思われる、と詠む。荒れた庭に変わらず照る月が、過ぎ去った昔とそこに住んだ人への思いを呼び起こしている。
 前歌の「荒れたる宿」を受けて「荒れたる庭」の月を詠み、荒れた住まいの寂しさから、昔の住人への懐かしさへと思いを深めている。

 初句「蓬分けて」は六音の字余りで、生い茂る蓬を分けて入って、の意である。蓬の茂る庭は荒れた住まいの象徴である。
 二句「荒れたる庭の」は、前歌の「荒れたる宿」と同じ語を用い、荒れ果てた庭の、の意である。
 三句「月見れば」は、月を見ると、の意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。
 四句「昔住みけん」の「けん」は過去推量の助動詞「けむ」の連体形で、昔住んでいたであろう、の意である。
 結句「人ぞ恋しき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「恋しき」で結ぶ係り結びで、昔の人を恋しく思う心を強めている。

よもぎ:野原に生える草で、荒れた家の庭に茂るものとして詠まれる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
いづくとてあはれならずはなけれども 荒れたる宿ぞ月はさびしき
次の歌
身にしみてあはれ知らする風よりも 月にぞ秋の色はありける