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身にしみてあはれ知らする風よりも
月にぞ秋の色はありける

歌の意味
身にしみて秋のあわれを知らせる風よりも、月にこそ、秋らしい趣はあるのだった。
鑑賞
秋歌 342

詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
 月の歌の一連の六首目である。身にしみて秋のあわれを知らせてくれる風もよいが、それよりも月にこそ、秋らしい趣が最もよく現れている、と詠む。秋を代表する風と月とを比べ、月にこそ秋の本質があると見定めている。
 本巻は巻頭の第二百五十四首、第二百五十五首で風によって秋を知る歌から始まった。ここではその風と月とを比べて月に軍配を上げており、風から月へと移ってきた本巻の流れを一首の中で示している。

 初句「身にしみて」は、身にしみ通るように、の意で、秋風の冷たさと心にしみるあわれとを表す。
 二句「あはれ知らする」は、しみじみとした秋の情趣を知らせる、の意である。
 三句「風よりも」は、そうした風よりも、の意で、比較の対象を示している。
 四句「月にぞ秋の」は、係助詞「ぞ」で月を強く取り立て、結句の「ける」と係り結びをなす。
 結句「色はありける」の「色」は趣、風情の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結び、月にこそ秋の趣があると気づいた感慨を表している。

いろ:趣、風情
作者
西行
出典
山家集
前の歌
蓬分けて荒れたる庭の月見れば 昔住みけん人ぞ恋しき
次の歌
虫の音に枯れゆく野辺の草むらに あはれを添へて澄める月影