天の原朝日山より出づればや
月の光の昼にまがへみて
- 歌の意味
-
大空の、朝日山から出たからであろうか、月の光が昼と見まがうほどに明るく見えて。
- 鑑賞
-
秋歌 359
詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
月の歌の一連の二十三首目である。月の光がまるで昼と見まがうほど明るいのは、その月が「朝日」という名をもつ朝日山から出てきたからなのだろうか、と詠む。山城国宇治の朝日山という地名を生かして、月の明るさの理由を機知によって説明している。
前歌の月を昼と思うという趣向を受け、この歌ではその理由を地名に求めている。なお本文の結句は「昼にまがへみて」とあり、読み仮名の行の「ひるにまかへる」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「天の原」は、広々とした大空をいう。
二句「朝日山より」の「朝日山」は、山城国宇治の山で、名に「朝日」を含むことから、昼の明るさとの縁で用いられている。
三句「出づればや」は、出たからであろうか、の意で、已然形に「ば」が付いた確定条件に、疑問の係助詞「や」が付いている。
四句「月の光の」は、月の光が、の意である。
結句「昼にまがへみて」の「まがふ」は、見まちがえる、の意で、昼と見まがえて見えて、と言いさして余情を残している。
あさひやま:山城国宇治にある山
まがふ:入り交じって見分けがつかなくなる、見まちがえる
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
月のため昼と思ふがかひなきに しばし曇りて夜を知らせよ
- 次の歌
-
有明の月のころにしなりぬれば 秋は夜なき心地こそすれ