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影冴えてまことに月の明き夜は
心も空に浮かれてぞすむ

歌の意味
光が冷たく冴えて、本当に月の明るい夜は、心も空に浮かれ出て、そこに住みつき、澄みわたることだ。
鑑賞
秋歌 365

詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
 月の歌の一連の二十九首目である。光が冷たく冴えて、本当に月の明るい夜には、心までも空へと浮かれ出て、月のいる空に住みつき、清らかに澄みわたる、と詠む。月の明るさに心を奪われ、身を離れて空にさまよい出る心を描いている。
 「すむ」に「住む」と「澄む」とを掛けている。本巻の第三百四十九首の「心浮かれし」と同じく、月によって心が浮かれ出る姿を詠み、第三百五十三首の、月に心が澄みに澄む歌とも通じている。

 初句「影冴えて」の「影」は月の光、「冴ゆ」は冷たく澄みわたる、の意である。
 二句「まことに月の」は、本当に月が、の意である。
 三句「明き夜は」は、明るい夜は、の意で、「は」で取り立てている。
 四句「心も空に」は、心までも空に、の意で、うわの空になる意も響かせている。
 結句「浮かれてぞすむ」の「すむ」は、空に「住む」意と、心が「澄む」意とを掛けた掛詞で、係助詞「ぞ」を受けて連体形で結んでいる。

すむ:そこに住む意の「住む」と、清らかに澄む意の「澄む」を掛ける
うかる:心が身を離れてさまよい出る、落ち着かなくなる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
誰もみなことわりとこそ定むらめ 昼をあらそふ秋の夜の月
次の歌
くまもなき月の面に飛ぶ雁の 影を雲かとまがへつるかな