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なかなかに曇ると見えて晴るる夜の
月は光の添ふ心地する

歌の意味
かえって、いったん曇るかと見えて、また晴れる夜の月は、いっそう光が増したような心地がする。
鑑賞
秋歌 370

詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
 月の歌の一連の三十四首目である。ずっと晴れている夜よりも、かえって、いったん曇るかと見えてまた晴れる夜の月の方が、いっそう光が増したように感じられる、と詠む。雲に隠れかけた月が再び現れるときの、ひときわの明るさを捉えている。
 本巻の第三百六十一首と同じ「なかなかに」で始まり、そこで雲を月の飾りと見たのと同じく、雲が月の光を引き立てるという趣向を詠んでいる。第三百六十八首が雲と風に乱される月を嘆いたのとは反対に、雲の後の月の明るさを喜んでいる。

 初句「なかなかに」は、かえって、むしろ、の意で、本巻の第三百六十一首の初句と同じである。
 二句「曇ると見えて」は、曇るかと見えて、の意である。
 三句「晴るる夜の」は、また晴れる夜の、の意で、二句と合わせて、曇りかけてまた晴れる夜をいう。
 四句「月は光の」は、月は光が、の意である。
 結句「添ふ心地する」の「添ふ」は、加わる、増す、の意で、光が増したような心地がする、と結んでいる。

なかなか:かえって、むしろ
そふ:加わる、増す
作者
西行
出典
山家集
前の歌
もろともに影を並ぶる人もあれや 月の漏りくる笹の庵に
次の歌
うき事の月の面にかかれども 早く過ぐるはうれしかりけり