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過ぎやらで月近く行く浮雲の
ただよふ見るはわびしかりけり

歌の意味
通り過ぎてしまわずに月の近くを行く浮雲が、いつまでも漂っているのを見るのはつらいことだ。
鑑賞
秋歌 372

詞書は前の歌に続き「月歌あまた詠みけるに」
 月の歌の一連の三十六首目である。月の近くを行く浮雲が、さっさと通り過ぎてしまわずに、いつまでも月のそばを漂っているのを見るのはつらい、と詠む。今にも月を隠しそうな雲を見て気をもむ心を描いている。
 前歌の「早く過ぐるはうれしかりけり」に対して、この歌は「過ぎやらで」漂う雲を「わびしかりけり」と詠み、過ぎる雲と過ぎない雲、うれしさとわびしさとが二首で対をなしている。次歌でも、月のあたりを離れない雲が詠まれる。

 初句「過ぎやらで」の「やる」は、すっかり〜しきる、の意で、打消の接続助詞「で」と合わせて、通り過ぎてしまわずに、の意となる。前歌の「早く過ぐる」と対になっている。
 二句「月近く行く」は、月の近くを行く、の意である。
 三句「浮雲の」は、空に浮かんで漂う雲の、の意である。
 四句「ただよふ見るは」は、漂っているのを見るのは、の意である。
 結句「わびしかりけり」の「わびし」は、つらい、やりきれない、の意で、前歌の結句「うれしかりけり」と対をなして結んでいる。

わびし:つらい、やりきれない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
うき事の月の面にかかれども 早く過ぐるはうれしかりけり
次の歌
厭へどもさすがに雲のうち散りて 月のあたりを離れざりけり