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今宵はと心得顔に澄む月の
光もてなす菊の白露

歌の意味
今宵こそは名月の夜だと心得たような顔つきで澄みわたる月の光を、もてなすように映している菊の白露であるよ。
鑑賞
秋歌 379

詞書「九月十三夜」
 詞書「九月十三夜」は、陰暦九月十三日の夜の月を詠む題である。この夜の月は八月十五夜に次ぐ名月とされた。今宵こそは名月の夜だと心得ているかのような顔つきで澄みわたる月の光を、菊に置いた白露が映して、もてなしているようだ、と詠む。九月の花である菊と、その露に宿る十三夜の月とを取り合わせている。
 本巻の第三百二十九首から八月十五夜の月が詠まれたのに続き、ここから九月十三夜の月が詠まれる。「もてなす」は本巻の第三百六十一首でも、雲が月をもてなす飾りとして用いられていた。

 初句「今宵はと」は、今宵こそは名月の夜だと、の意である。
 二句「心得顔に」は、事情を心得ているような顔つきで、の意で、月を擬人化している。
 三句「澄む月の」は、澄みわたる月の、の意である。
 四句「光もてなす」の「もてなす」は、大切に扱う、歓待する、の意で、白露が月の光を映して歓迎するさまをいう。
 結句「菊の白露」は体言止めで、九月の花である菊に置いた白露を示して結ぶ。

こころえがほ:事情をよく心得ているような顔つき
もてなす:大切に扱う、歓待する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
限りなく名残惜しきは秋の夜の 月にともなふ曙の空
次の歌
雲消えし秋の半ばの空よりも 月は今宵ぞ名に負へりける