古典和歌stream

わがよとや更けゆく空を思ふらん
声も休まぬきりぎりすかな

歌の意味
自分の盛りの世、自分の夜だと思って、更けていく夜空を思っているのだろうか。声も休めずに鳴き続けるこおろぎであることよ。
鑑賞
秋歌 395

詞書「深夜聞蛬」
 詞書「深夜聞蛬」は、深夜にこおろぎの声を聞くことを詠む題である。「蛬」はきりぎりす、今のこおろぎをいう。夜が更けていくのを、自分の盛りの世、自分の夜だと思っているのだろうか、声も休めずに鳴き続けるこおろぎである、と詠む。夜更けにひたすら鳴き続ける虫の声に、虫の心を思いやっている。
 「よ」に「世」と「夜」とを掛け、こおろぎにとっての盛りの世と、更けていく夜とを重ねている。前の二首の月の前の虫に続き、ここでは深夜に虫の声を聞いている。

 初句「わがよとや」の「よ」は、自分の盛りの「世」と、自分の時である「夜」とを掛けた掛詞で、「や」は疑問の係助詞である。
 二句「更けゆく空を」は、更けていく夜の空を、の意である。
 三句「思ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、係助詞「や」を受けて連体形で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「声も休まぬ」は、声も休めずに鳴き続ける、の意である。
 結句「きりぎりすかな」は、今のこおろぎをいい、「かな」で詠嘆して結ぶ。

よ:盛りの時である「世」と、更けゆく「夜」を掛ける
きりぎりす:今のこおろぎ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
露ながらこぼさで折らん月影に 小萩が枝の松虫の声
次の歌
夕露の玉敷く小田の稲筵 かぶす穂末に月ぞ澄みける