- 歌の意味
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ほかに比べるもののない心地がすることだ。秋の夜の、月が澄みわたる峰で鳴く牡鹿の声は。
- 鑑賞
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秋歌 397
詞書「月前鹿」
詞書「月前鹿」は、月の前で鳴く鹿を詠む題である。秋の夜、月が澄みわたる峰で鳴く牡鹿の声を聞くと、ほかに比べるもののないほどしみじみとした心地がする、と詠む。澄んだ月の光と、妻を求めて鳴く鹿の声という秋の代表的な景物を取り合わせ、その情趣の深さを讃えている。
前の月の前の虫の歌に続いて、ここでは月の前の鹿が詠まれる。鹿の声は本巻の第三百首などにも詠まれており、第四百二十九首からは鹿を詠む歌がまとまって続く。
初句「類なき」は、比べるものがない、この上ない、の意である。
二句「心地こそすれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「すれ」で結ぶ係り結びで、そのような心地がすることだ、と強めている。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「秋の夜の」は、四句の「月」にかかる。
四句「月澄む嶺の」は、月が澄みわたる峰の、の意である。
結句「さを鹿の声」は体言止めで、「さ」は接頭語である。牡鹿の鳴く声を示し、二句の心地の原因を倒置で後に示している。
さをしか:牡鹿、雄の鹿
たぐひなし:比べるものがない、この上ない
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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夕露の玉敷く小田の稲筵 かぶす穂末に月ぞ澄みける
- 次の歌
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木の間洩る有明の月のさやけきに 紅葉を添へて眺めつるかな