木の間洩る有明の月のさやけきに
紅葉を添へて眺めつるかな
- 歌の意味
-
木々の間から漏れてくる有明の月の光が明るく澄んでいるところに、紅葉の色を添えて眺めたことだ。
- 鑑賞
-
秋歌 398
詞書「月前紅葉」
詞書「月前紅葉」は、月の前の紅葉を詠む題である。木々の間から漏れてくる有明の月の光が明るく澄んでいるところに、照らされた紅葉の色を添えて、物思いにふけりながら眺めたことだ、と詠む。月の光と紅葉の色という秋の二つの美しさを同時に味わっている。
上の句は本巻の第三百四十五首「木の間洩る有明の月を眺むれば」とほぼ同じで、そこでは有明の月に峰の松風を添えて寂しさを深めていた。この歌は同じ有明の月に紅葉を添えて美しさを加えており、耳で聞く松風と目で見る紅葉とが対になっている。
初句「木の間洩る」は、木々の間から漏れてくる、の意で、本巻の第三百四十五首の初句と同じである。
二句「有明の月の」は八音の字余りで、夜が明けてもなお空に残る月の、の意である。
三句「さやけきに」の「さやけし」は、明るく澄んでいる、の意で、その明るさの中に、の意である。
四句「紅葉を添へて」は、紅葉の色を加えて、の意で、月の光に紅葉の美しさが加わるさまをいう。
結句「眺めつるかな」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、眺めたことだ、と結んでいる。
さやけし:明るく澄んでいる
もみぢ:秋に木の葉が赤や黄に色づくこと、またその葉
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
類なき心地こそすれ秋の夜の 月澄む嶺のさを鹿の声
- 次の歌
-
竜田山月澄む嶺のかひぞなき 麓に霧の晴れぬ限りは