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竜田山月澄む嶺のかひぞなき
麓に霧の晴れぬ限りは

歌の意味
竜田山の、月の澄みわたる峰も、そのかいがない。麓に霧が立ちこめて晴れないかぎりは。
鑑賞
秋歌 399

詞書「霧隔月」
 詞書「霧隔月」は、霧が月を隔てて見えなくするさまを詠む題である。竜田山の峰には月が澄みわたっているのに、麓に霧が立ちこめて晴れないかぎりは、麓からはその月を見ることができず、月の澄む甲斐もない、と詠む。峰の澄んだ月と、それを隔てる麓の霧とを対比させている。
 「かひ」に、効果の意の「甲斐」と、山と山との間の意の「峡」とを掛け、竜田山の縁でつないでいる。これまで月を隠すものとして雲が詠まれてきたが、ここでは霧が月を隔てるものとして詠まれている。

 初句「竜田山」は、大和国の歌枕で、紅葉の名所として知られる山である。
 二句「月澄む嶺の」は、月が澄みわたる峰の、の意である。
 三句「かひぞなき」の「かひ」は、効果の意の「甲斐」と、山あいの意の「峡」とを掛けた掛詞で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「なき」で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「麓に霧の」は、山の麓に霧が、の意である。
 結句「晴れぬ限りは」は、晴れないかぎりは、の意で、三句の理由を倒置で後に示している。

かひ:効果の意の「甲斐」と、山あいの意の「峡」を掛ける
たつたやま:大和国の歌枕で、紅葉の名所として知られた
作者
西行
出典
山家集
前の歌
木の間洩る有明の月のさやけきに 紅葉を添へて眺めつるかな
次の歌
いにしへを何につけてか思ひ出でん 月さへ曇る世ならましかば