いにしへを何につけてか思ひ出でん
月さへ曇る世ならましかば
- 歌の意味
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昔のことを何によって思い出せばよいのだろうか。もしも月までも曇ってしまう世であったならば。
- 鑑賞
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秋歌 400
詞書「月前懐旧」
詞書「月前懐旧」は、月の前で昔をしのぶことを詠む題である。何もかもが移り変わるこの世で、もしも月までも曇って昔と変わってしまうような世であったならば、昔のことを何によって思い出せばよいのだろうか、と詠む。昔と変わらず澄む月こそが、昔をしのぶよすがであることを、反実仮想の形で表している。
本巻の第三百五十首「何事も変はりのみゆく世の中に同じ影にて澄める月かな」で詠まれた月の不変を、ここでは昔を思い出すためのよりどころとして捉えている。第三百五十一首の昔の秋を思い出して袖に月を宿す歌とも通じる。
初句「いにしへを」は、過ぎ去った昔を、の意である。
二句「何につけてか」の「か」は疑問の係助詞で、何によって、何をよすがとして、の意である。
三句「思ひ出でん」の「ん」は推量の助動詞「む」の連体形で、係助詞「か」を受けて結び、思い出せばよいのだろうか、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「月さへ曇る」の「さへ」は添加の副助詞で、ほかのものだけでなく月までも曇る、の意である。
結句「世ならましかば」の「ましか」は反実仮想の助動詞「まし」の已然形で、そのような世であったならば、と現実に反する仮定を示して結ぶ。
いにしへ:過ぎ去った昔
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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竜田山月澄む嶺のかひぞなき 麓に霧の晴れぬ限りは
- 次の歌
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世の中の憂きをも知らで澄む月の 影は我が身の心地こそすれ