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昼と見ゆる月に明くるを知らましや
時つく鐘の音せざりせば

歌の意味
昼かと見えるほど明るい月の光の中で、夜が明けたことを知ることができただろうか。時を告げる寺の鐘の音がしなかったならば。
鑑賞
秋歌 408

詞書「月明寺辺」
 詞書「月明寺辺」は、寺のあたりの明るい月を詠む題である。月の光があまりに明るく昼かと見えるほどなので、もし時を告げる寺の鐘の音がしなかったならば、夜が明けたことにも気づかなかっただろう、と詠む。月の明るさを、夜明けと区別がつかないほどだと言って讃えている。
 本巻の第三百五十八首から第三百六十四首まで続いた、月夜を昼と見まがう趣向を、ここでは寺の鐘の音と取り合わせ、題の「寺辺」を生かしている。第三百六十三首では鶏が月光を夜明けと思い違えていたが、ここでは鐘の音が夜明けを知らせている。

 初句「昼と見ゆる」は六音の字余りで、昼かと見えるほど明るい、の意である。
 二句「月に明くるを」は、月の光の中で夜が明けるのを、の意である。
 三句「知らましや」の「まし」は反実仮想の助動詞、「や」は反語の係助詞で、知ることができただろうか、いやできなかっただろう、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「時つく鐘の」の「時つく」は、時刻を告げる、の意で、寺で時刻を知らせる鐘をいう。
 結句「音せざりせば」の「せば」は過去の助動詞「き」の未然形に「ば」が付いた形で、音がしなかったならば、と三句と呼応する反実仮想の条件を倒置で示している。

ときつく:鐘などを打って時刻を告げる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ふりさけし人の心ぞ知られぬる 今宵三笠の月を眺めて
次の歌
かたそぎの行き合はぬ間より漏る月や 冴えて御袖の霜に置くらん