古典和歌stream

都にて月をあはれと思ひしは
数より外のすさびなりけり

歌の意味
都にいて月をしみじみとあわれだと思っていたのは、物の数にも入らない、ほんの慰みごとであったのだ。
鑑賞
秋歌 418

詞書は前の歌に続き「旅宿月」
 前歌に続いて「旅宿月」の題で詠まれた歌で、旅先の月を詠む歌を結ぶ一首である。旅に出て月を見てみると、都にいて月をあわれだと思っていたのは、物の数にも入らない、ほんの慰みごとにすぎなかったのだ、と詠む。旅の月の深いあわれを知って、都での月の見方を省みている。
 本巻の第四百十一首の「旅こそ月はあはれなりけれ」と同じ心を、さらに強く述べたもので、都の月と旅の月との対比によって、旅の月を詠む歌が結ばれている。

 初句「都にて」は、都にいて、の意である。
 二句「月をあはれと」は、月をしみじみと心にしみるものと、の意である。
 三句「思ひしは」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、思っていたのは、の意である。
 四句「数より外の」は、物の数にも入らない、取るに足りない、の意である。
 結句「すさびなりけり」の「すさび」は、慰みごと、気まぐれな遊び、の意で、「なりけり」は気づきの詠嘆である。

すさび:慰みごと、気まぐれな遊び
かずよりほか:物の数にも入らないこと
作者
西行
出典
山家集
前の歌
月宿る同じうき寝の波にしも 袖しをるべき契りありける
次の歌
沖かけて八重の潮路を行く船は ほかにぞ聞きし初雁の声