古典和歌stream

沖かけて八重の潮路を行く船は
ほかにぞ聞きし初雁の声

歌の意味
沖をめざして幾重にも重なる潮路を行く船の上では、いつもとはまったく別の所で、初雁の声を聞いたことだ。
鑑賞
秋歌 419

詞書「般中初雁」
 詞書「般中初雁」は、船の中で聞く初雁を詠む題で、「般」は「船」の意とみられる。沖をめざして幾重にも重なる遠い潮路を行く船の上で、初雁の声を、いつも聞く陸の上とはまったく別の所で聞いた、と詠む。海の上で聞く初雁の声の珍しさと、旅の身の心細さとを表している。
 前の旅の月の歌々に続き、ここから雁を詠む歌が続く。秋に北から渡ってくる雁の初めての声を、船旅の中で聞くという設定で、旅の歌から雁の歌への橋渡しとなっている。

 初句「沖かけて」は、沖をめざして、沖の方へかけて、の意である。
 二句「八重の潮路を」は、幾重にも重なる遠い海路を、の意である。
 三句「行く船は」は、進んでいく船の上では、の意で、「は」で取り立てている。
 四句「ほかにぞ聞きし」は、いつもとは別の所で聞いた、の意で、係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ。
 結句「初雁の声」は体言止めで、その秋初めて渡ってきた雁の声を示して結ぶ。

しほぢ:海の上の道、海路
はつかり:その秋初めて北から渡ってくる雁
作者
西行
出典
山家集
前の歌
都にて月をあはれと思ひしは 数より外のすさびなりけり
次の歌
横雲の風に別るるしののめに 山飛び越ゆる初雁の声