- 歌の意味
-
空の色をしたこちら側を裏地として立ちこめる霧の、その表に、雁が列を掛けて記している手紙であるよ。
- 鑑賞
-
秋歌 424
詞書「霧上雁」
詞書「霧上雁」は、霧の上を飛ぶ雁を詠む題である。空の色をしたこちら側を裏として立ちこめる霧を一枚の紙に見立て、その表に雁が列をなして掛け渡り、手紙を記しているようだ、と詠む。霧を紙に、雁の列を手紙の文字に見立てた機知の歌である。
本巻の第四百二十一首、第四百二十三首に続く雁を玉章とする見立ての三首目で、ここでは霧そのものを紙に見立て、「裏」「表」と紙の両面に見立てている。前歌で雁の姿を隠していた霧が、ここでは雁の文字を記す紙となっている。
初句「空色の」は、空の色をした、の意である。
二句「こなたを裏に」の「こなた」は、こちら側をいい、空の色をしたこちら側を裏として、の意である。
三句「立つ霧の」は、立ちこめる霧の、の意で、霧を一枚の紙に見立てている。
四句「表に雁の」は、霧の表側に雁が、の意で、二句の「裏」と対になっている。
結句「掛くる玉章」は体言止めで、「掛くる」は「掛く」の連体形である。雁が列を掛け渡して記す手紙を示して結ぶ。
たまづさ:手紙、便り
こなた:こちら側
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
玉章の続きは見えで雁がねの 声こそ霧に消たれざりけれ
- 次の歌
-
鶉鳴く折にしなれば霧こめて あはれさびしき深草の里