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萩が枝の露ためず吹く秋風に
牡鹿鳴くなり宮城野の原

歌の意味
萩の枝の露をとどめることなく吹き散らす秋風の中に、牡鹿の鳴く声が聞こえる、宮城野の原では。
鑑賞
秋歌 430

詞書は前の歌に続き「鹿」
 鹿を詠む一連の二首目である。萩の枝に置いた露を少しもとどめず吹き散らす秋風の中で、牡鹿の鳴く声が聞こえてくる、萩の名所である宮城野の原で、と詠む。萩、露、秋風、鹿という秋の景物を、萩の名所宮城野の原に集めている。
 本巻の第二百八十七首の「しばしもためぬ荻の上風」と同じく、露をとどめない風を詠んでいる。前歌が萩の古枝を吹く風に鹿が鳴く景を詠んだのを受け、ここでは萩の名所の宮城野へと舞台を移している。

 初句「萩が枝の」は、萩の枝の、の意で、「が」は連体修飾の格助詞である。
 二句「露ためず吹く」は、露をとどめることなく吹き散らす、の意である。
 三句「秋風に」は、秋風の中で、の意である。
 四句「牡鹿鳴くなり」の「なり」は、声によって推定する助動詞で、牡鹿が鳴いているようだ、の意である。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
 結句「宮城野の原」は体言止めで、陸奥国の歌枕で萩の名所として知られる宮城野を示して結ぶ。

みやぎの:陸奥国の歌枕で、萩の名所として知られた
ためず:とどめない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
しだり咲く萩の古枝に風かけて すがひすがひに牡鹿鳴くなり
次の歌
夜もすがら妻恋ひかねて鳴く鹿の 涙や野辺の露となるらん