さらぬだに秋はもののみかなしきを
涙もよほすさを鹿の声
- 歌の意味
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そうでなくてさえ、秋はただもの悲しいばかりなのに、さらに涙を誘う牡鹿の声であるよ。
- 鑑賞
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秋歌 432
詞書は前の歌に続き「鹿」
鹿を詠む一連の四首目である。そうでなくてさえ、秋という季節はただもの悲しいばかりなのに、そこへさらに涙を誘う牡鹿の鳴く声が聞こえてくる、と詠む。秋のもの悲しさに鹿の声が加わって、悲しみが極まるさまを表している。
本巻の第四百四首の「さらぬだに浮かれてものを思ふ身の」と同じく「さらぬだに」で始まり、もとからある思いに、月や鹿の声がさらに加わるという形をとっている。前歌の鹿の涙に続き、ここでは鹿の声が人の涙を誘っている。
初句「さらぬだに」は、そうでなくてさえ、の意で、本巻の第四百四首の初句と同じである。
二句「秋はもののみ」は、秋はただ何かにつけて、の意で、「のみ」は限定を表す。
三句「かなしきを」は、もの悲しいのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
四句「涙もよほす」の「もよほす」は、引き起こす、誘い出す、の意で、涙を誘う、の意である。
結句「さを鹿の声」は体言止めで、「さ」は接頭語である。涙を誘う牡鹿の声を示して結ぶ。
もよほす:引き起こす、誘い出す
さらぬだに:そうでなくてさえ
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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夜もすがら妻恋ひかねて鳴く鹿の 涙や野辺の露となるらん
- 次の歌
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山おろしに鹿の音たぐふ夕暮に ものかなしとはいふにやあるらん