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なにとなく住ままほしくぞ思ほゆる
鹿あはれなる秋の山里

歌の意味
なんとなく、ここに住んでみたいと思われることだ。鹿の声がしみじみと心にしみる秋の山里は。
鑑賞
秋歌 435

詞書は前の歌に続き「鹿」
 鹿を詠む一連の七首目で、一連を結ぶ歌である。鹿の鳴く声がしみじみと心にしみる秋の山里を見ると、これといった理由もなく、ここに住んでみたいと思われる、と詠む。前の歌々で悲しみを誘うものとして詠まれた鹿の声を、山里に住みたいと思わせる情趣として捉え直している。
 結句「秋の山里」は本巻の第三百二首、第三百十八首と同じで、鹿の声と月に満たされた山里、月を待つ閑居の山里と、山里の秋の情趣が繰り返し詠まれてきた。ここではそれが住みたいという願いにまで高まっている。

 初句「なにとなく」は、これといった理由もなく、なんとなく、の意である。
 二句「住ままほしくぞ」の「まほし」は願望の助動詞で、住みたく、の意である。係助詞「ぞ」は三句の「思ほゆる」と係り結びをなす。
 三句「思ほゆる」は、自然と思われる、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「鹿あはれなる」は、鹿の声がしみじみと心にしみる、の意である。
 結句「秋の山里」は体言止めで、本巻の第三百二首などと同じ結句で結んでいる。

おもほゆ:自然と思われる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
鹿もわぶ空のけしきも時雨めり かなしかれともなれる秋かな
次の歌
牡鹿鳴く小倉の山の裾近み ただ独りすむ我が心かな