分けて入る袖にあはれをかけよとて
露けき庭に虫さへぞ鳴く
- 歌の意味
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草を分けて入っていく私の袖に、あわれの涙をかけよと言うかのように、露に濡れた庭で虫までも鳴いている。
- 鑑賞
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秋歌 444
詞書「年ごろ申しなれたる人の、伏見に住むと聞きて、尋ねまかりたりけるに、庭の草道も見えぬほどに茂りて、虫の鳴きければ」
詞書から、長年親しくつきあってきた人が伏見に住んでいると聞いて訪ねていったところ、庭の草が道も見えないほどに茂っていて、虫が鳴いていたので詠んだ歌であることがわかる。茂った草を分けて入っていく自分の袖に、あわれの涙をかけよと言うかのように、露に濡れた庭で虫までもが鳴いている、と詠む。荒れた庭の寂しさに、旧知の人の暮らしを思いやっている。
本巻の第二百七十一首の「分けて入る庭しもやがて野辺なれば」と同じ初句をもち、そこでは萩の盛りを独り占めする喜びが詠まれたのに対し、ここでは荒れた庭のあわれが詠まれている。ここから虫を詠む歌が続く。
初句「分けて入る」は、茂った草を分けて入っていく、の意で、詞書の、道も見えないほど茂った庭のさまを受けている。
二句「袖にあはれを」は、袖にしみじみとした思いを、の意で、涙をかけることを暗示している。
三句「かけよとて」の「かけよ」は命令形で、かけよと言って、の意で、虫の鳴き声を人に呼びかける言葉に見立てている。
四句「露けき庭に」の「露けし」は、露にしっとりと濡れている、の意である。
結句「虫さへぞ鳴く」の「さへ」は添加の副助詞で、草の茂りや露だけでなく虫までも、の意である。係助詞「ぞ」を受けて連体形「鳴く」で結んでいる。
つゆけし:露にしっとりと濡れている、また涙がちである
としごろ:長年
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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小夜衣いづくの里に打つならん 遠く聞こゆる槌の音かな
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夕されや玉置く露の小笹生に 声はつならすきりぎりすかな