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夕されや玉置く露の小笹生に
声はつならすきりぎりすかな

歌の意味
夕方になったことよ。玉のような露が置く小笹の茂みで、その秋初めての声を鳴らしはじめたこおろぎであることよ。
鑑賞
秋歌 445

詞書「虫の歌詠み侍りけるに」
 詞書から、虫の歌を詠んだ折の作であることがわかる。ここから第四百五十八首まで、同じ詞書のもとに虫を詠む歌が十四首続く。夕方になった、玉のような露が置いている小笹の茂みで、こおろぎがその秋初めての声を鳴らしはじめた、と詠む。夕暮れの露と小笹の中で、初めて聞く虫の声を捉え、虫の一連の始まりとしている。
 前歌の、旧知の人の庭で鳴く虫に続き、ここから虫そのものを詠む一連が始まる。初めての声から始まり、やがて弱っていく虫の声へと、一連は秋の深まりをたどっていく。

 初句「夕されや」の「夕されば」は夕方になると、の意で、ここでは「や」を付けて、夕方になったことよ、と詠嘆している。ここで句切れとなる初句切れの歌である。
 二句「玉置く露の」は、玉のように置いている露の、の意である。
 三句「小笹生に」の「小笹生」は、小笹の生えている所をいう。
 四句「声はつならす」は、その秋初めての声を鳴らす、の意に解される。
 結句「きりぎりすかな」は、今のこおろぎをいい、「かな」で詠嘆して結ぶ。

こざさふ:小笹の生えている所
ゆふさる:夕方になる
きりぎりす:今のこおろぎ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
分けて入る袖にあはれをかけよとて 露けき庭に虫さへぞ鳴く
次の歌
秋風に穂末波寄る刈萱の 下葉に虫の声乱るなり