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秋風に穂末波寄る刈萱の
下葉に虫の声乱るなり

歌の意味
秋風に穂先が波のように寄せては返す刈萱の、その下葉で、虫の声が入り乱れて聞こえる。
鑑賞
秋歌 446

詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
 虫を詠む一連の二首目である。秋風に吹かれて刈萱の穂先が波のように寄せては返し、その下葉のあたりで、さまざまな虫の声が入り乱れて聞こえる、と詠む。風に揺れる刈萱の穂の動きと、その下で乱れ鳴く虫の声とを重ねている。
 前歌が初めて鳴く一匹のこおろぎを詠んだのに対し、ここでは多くの虫の声が入り乱れている。本巻の第二百八十五首の「荻の葉乱る」、第二百九十九首の「心乱るる」と同じく、乱れる秋の景を詠んでいる。

 初句「秋風に」は、秋風に吹かれて、の意である。
 二句「穂末波寄る」は、穂先が波のように寄せる、の意で、刈萱の穂の揺れを波に見立てている。
 三句「刈萱の」は、薄に似た秋草である刈萱の、の意である。
 四句「下葉に虫の」は、刈萱の下の方の葉で虫が、の意で、二句の「穂末」と上下の対になっている。
 結句「声乱るなり」の「なり」は、声によって推定する助動詞で、声が入り乱れて聞こえる、の意である。

ほずゑ:穂の先
したば:草木の下の方の葉
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夕されや玉置く露の小笹生に 声はつならすきりぎりすかな
次の歌
きりぎりす鳴くなる野辺はよそなるを 思はぬ袖に露のこぼるる