きりぎりす鳴くなる野辺はよそなるを
思はぬ袖に露のこぼるる
- 歌の意味
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こおろぎの鳴いている野辺は、遠くよそにあるのに、思いもかけず私の袖に露がこぼれることだ。
- 鑑賞
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秋歌 447
詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
虫を詠む一連の三首目である。こおろぎが鳴いている野辺は遠くよそにあって、自分はそこにいるわけではないのに、思いもかけず自分の袖に露がこぼれてくる、と詠む。遠くの虫の声を聞いただけで涙がこぼれることを、野辺の露が袖にこぼれると言いなしている。
袖の露を涙と見る見立ては本巻の第二百九十四首などにも見られ、この一連でも次歌以下、虫の声に袖を濡らす歌が続いていく。
初句「きりぎりす」は、今のこおろぎをいう。
二句「鳴くなる野辺は」の「なる」は、声によって推定する助動詞「なり」の連体形で、鳴いているらしい野辺は、の意である。
三句「よそなるを」の「よそ」は、自分とは関わりのない遠い所の意で、「を」は逆接の接続助詞である。よそにあるのに、の意である。
四句「思はぬ袖に」は、思いもかけない袖に、の意で、野辺にいない自分の袖をいう。
結句「露のこぼるる」は、露がこぼれる、の意で、連体形で止めて余情を残している。露は涙を暗示している。
よそ:自分とは関わりのない所、遠く離れた所
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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秋風に穂末波寄る刈萱の 下葉に虫の声乱るなり
- 次の歌
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秋風の更けゆく野辺の虫の音に はしたなきまで濡るる袖かな