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秋風の更けゆく野辺の虫の音に
はしたなきまで濡るる袖かな

歌の意味
秋風の吹く夜が更けていく野辺の虫の声に、きまりが悪いほどまでに涙で濡れる私の袖であることよ。
鑑賞
秋歌 448

詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
 虫を詠む一連の四首目である。秋風が吹き、夜が更けていく野辺で鳴く虫の声を聞いていると、人に見られたらきまりが悪いほどまでに、涙で袖が濡れてしまう、と詠む。虫の声に誘われる涙の多さを、恥ずかしいほどだと言って表している。
 前歌が遠くの虫の声に思いがけず袖を濡らしたのに対し、この歌は夜更けの野辺の虫の声に、恥ずかしいほど袖を濡らしており、涙の量が増していく。

 初句「秋風の」は、秋風の吹く、の意で、二句の「更けゆく」へ続く。
 二句「更けゆく野辺の」は、夜が更けていく野辺の、の意で、秋の深まりの意も響かせている。
 三句「虫の音に」は、虫の鳴く声によって、の意である。
 四句「はしたなきまで」の「はしたなし」は、きまりが悪い、体裁が悪い、の意で、きまりが悪いほどまでに、の意である。
 結句「濡るる袖かな」は、涙で濡れる袖であることよ、と「かな」で詠嘆して結ぶ。

はしたなし:きまりが悪い、体裁が悪い
作者
西行
出典
山家集
前の歌
きりぎりす鳴くなる野辺はよそなるを 思はぬ袖に露のこぼるる
次の歌
虫の音をよそに思ひて明かさねば 袂も露は野辺に変はらじ