虫の音をよそに思ひて明かさねば
袂も露は野辺に変はらじ
- 歌の意味
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虫の声を自分とは関わりのないものと思って夜を明かすわけではないので、私の袂も、露の多さは野辺と変わらないだろう。
- 鑑賞
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秋歌 449
詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
虫を詠む一連の五首目である。虫の声を自分とは関わりのないよそごとと思って聞き流し、夜を明かすわけではないので、虫の声に流す涙で、自分の袂の露も、野辺の露と変わらないほど多いだろう、と詠む。虫の声に心を寄せるあまり、袂が野辺と同じほど露に濡れることを表している。
本巻の第四百四十七首の「よそなるを」と同じ「よそ」の語を用い、そこでは野辺がよそにあるのに袖が濡れると詠んだのに対し、ここでは虫の声をよそに思わないので袂が野辺と同じになると詠んでいる。
初句「虫の音を」は、虫の鳴く声を、の意である。
二句「よそに思ひて」は、自分とは関わりのないものと思って、の意である。
三句「明かさねば」は、夜を明かすわけではないので、の意で、打消の已然形に「ば」が付いた確定条件である。
四句「袂も露は」は、袂も露の多さは、の意で、「も」は野辺と同じく袂も、の含みをもつ。
結句「野辺に変はらじ」の「じ」は打消推量の助動詞で、野辺と変わらないだろう、と結んでいる。
たもと:着物の袖の下の袋状になった部分、また袖
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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秋風の更けゆく野辺の虫の音に はしたなきまで濡るる袖かな
- 次の歌
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野辺に鳴く虫もやものはかなしきに 答へましかば問ひて聞かまし