秋の野の尾花が袖に招かせて
いかなる人をまつ虫の声
- 歌の意味
-
秋の野の尾花の袖に招かせておいて、いったいどのような人を待っているのか、松虫の声よ。
- 鑑賞
-
秋歌 453
詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
虫を詠む一連の九首目である。秋の野で、尾花の穂を袖に見立ててそれに人を手招きさせておいて、いったいどのような人を待って鳴いているのか、松虫の声よ、と詠む。風に揺れる尾花を招く袖に、松虫の名を「待つ」に重ね、恋人を待つ情景に見立てている。
「まつ虫」に「待つ」を掛けている。尾花が人を招くという見立ては本巻の第二百七十三首、第二百九十七首、第三百八十五首にも見え、ここでは尾花が松虫に代わって人を招いている。
初句「秋の野の」は、秋の野の、の意である。
二句「尾花が袖に」は、尾花を袖に見立てて、尾花の袖に、の意で、「が」は連体修飾の格助詞である。
三句「招かせて」の「せ」は使役の助動詞で、尾花の袖に人を招かせて、の意である。
四句「いかなる人を」は、どのような人を、の意で、結句の「まつ」の対象となる。
結句「まつ虫の声」の「まつ」は、虫の名の「松虫」と、人を「待つ」とを掛けた掛詞で、体言止めで結んでいる。
まつむし:虫の名の「松虫」と、人を「待つ」を掛ける
をばな:薄の穂、また穂の出た薄
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
秋の夜に声も休まず鳴く虫を つゆまどろまで聞き明かすかな
- 次の歌
-
夜もすがら袂に虫の音をかけて 払ひわづらふ袖の白露