虫の音を弱りゆくかと聞くからに
心に秋の日数をぞ経る
- 歌の意味
-
虫の鳴く声が弱っていくのかと思って聞くとすぐに、心の中で、秋の過ぎた日数を数えて過ごすことだ。
- 鑑賞
-
秋歌 456
詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
虫を詠む一連の十二首目である。虫の鳴く声がしだいに弱っていくのかと思って聞くとすぐに、心の中で秋がもうどれほどの日数を経たのかを数え、過ぎた日々を思う、と詠む。虫の声の衰えに、秋の深まりと過ぎていく時を感じ取っている。
本巻の第四百四十五首で初めて鳴きはじめた虫の声が、ここでは弱っていくものとして聞かれ、虫の一連は秋の終わりへと向かっていく。次歌も弱る虫の声と自分の身とを重ねている。
初句「虫の音を」は、虫の鳴く声を、の意である。
二句「弱りゆくかと」は、しだいに弱っていくのかと、の意である。
三句「聞くからに」の「からに」は、〜するとすぐに、〜するだけで、の意である。
四句「心に秋の」は、心の中で秋の、の意である。
結句「日数をぞ経る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「経る」で結ぶ係り結びで、秋の過ぎた日数を経て思う、の意である。
ひかず:日の数、日数
からに:〜するとすぐに、〜するだけで
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
きりぎりす夜寒になるを告げ顔に 枕のもとに来つつ鳴くなり
- 次の歌
-
秋深み弱るは虫の声のみか 聞く我とても頼みやはある