虫の音に露けかるべき袂かは
あやしや心もの思ふべし
- 歌の意味
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虫の声くらいで涙に濡れるはずの袂であろうか、そうではないはずだ。不思議なことよ、私の心はきっと何かもの思いをしているにちがいない。
- 鑑賞
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秋歌 458
詞書は前の歌に続き「虫の歌詠み侍りけるに」
虫を詠む一連の十四首目で、一連を結ぶ歌である。虫の声を聞いたくらいで涙に濡れるはずの袂ではないのに、こうして濡れているのは不思議なことだ、自分の心はきっと何かもの思いをしているにちがいない、と詠む。虫の声に流す涙の理由を、自分の心の奥のもの思いに見いだしている。
この一連は虫の声に袖を濡らす歌を重ねてきたが、ここでその涙は虫のせいだけではなく、自分の心にもの思いがあるからだと気づいて結ばれている。
初句「虫の音に」は、虫の鳴く声によって、の意である。
二句「露けかるべき」の「露けし」は、露にしっとりと濡れる、涙がちである、の意で、涙に濡れるはずの、の意である。
三句「袂かは」の「かは」は反語で、袂であろうか、いやそうではない、の意である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「あやしや心」の「あやし」は、不思議だ、の意で、「や」は詠嘆の間投助詞である。
結句「もの思ふべし」の「べし」は推量の助動詞で、もの思いをしているにちがいない、と自らの心を推し量って結んでいる。
つゆけし:露にしっとりと濡れている、また涙がちである
あやし:不思議だ、変だ
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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秋深み弱るは虫の声のみか 聞く我とても頼みやはある
- 次の歌
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独り寝の友には馴れてきりぎりす 鳴く音を聞けばもの思ひ添ふ