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草深み分け入りて訪ふ人もあれや
ふりゆく跡の鈴虫の声

歌の意味
草が深く茂っているので、分け入って訪ねて来る人もいてほしいものだ。古びていく昔の住まいの跡で鳴く鈴虫の声よ。
鑑賞
秋歌 460

詞書「故郷虫」
 詞書「故郷虫」は、古くなった里や昔の住まいで鳴く虫を詠む題である。草が深く茂って道もわからなくなった昔の住まいの跡に、草を分け入って訪ねて来る人もいてほしい、古びていくその跡で鈴虫が鳴いている、と詠む。荒れていく旧居の寂しさと、そこで鳴く鈴虫の声とを重ねている。
 「ふり」に、時が経って古びる意の「古り」と、鈴を「振り」とを掛け、鈴虫の縁でつないでいる。本巻の第四百四十四首の、草の茂る旧知の庭で虫が鳴く歌とも通じる。

 初句「草深み」は、草が深いので、の意で、形容詞の語幹に「み」が付いて理由を表している。
 二句「分け入りて訪ふ」は、草を分け入って訪ねる、の意である。
 三句「人もあれや」は六音の字余りで、人もいてほしい、の意である。「や」は詠嘆の間投助詞で、願望を表している。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「ふりゆく跡の」の「ふり」は、古びる意の「古り」と、鈴を「振り」とを掛けた掛詞で、古びていく住まいの跡の、の意である。
 結句「鈴虫の声」は体言止めで、四句の「振り」と縁のある鈴虫の声を示して結ぶ。

ふる:年月が経って古くなる意の「古る」と、鈴を「振る」を掛ける
ふるさと:古くなった里、昔住んでいた所
作者
西行
出典
山家集
前の歌
独り寝の友には馴れてきりぎりす 鳴く音を聞けばもの思ひ添ふ
次の歌
壁に生ふる小草にわぶるきりぎりす 時雨るる庭の露厭ふべし