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君が住む宿の坪をば菊ぞ飾る
仙の宮とやいふべかるらん

歌の意味
わが君のお住まいの坪庭を、菊が美しく飾っている。これは仙人の住む宮とでも言うべきであろうか。
鑑賞
秋歌 466

詞書「京極太政大臣中納言と申しけるをり、菊をおびただしきほどにしたてて、鳥羽院に参らせ給ひたりけり、鳥羽の南殿の東面の坪に、所なきほどに植ゑさせ給ひたりけり、公重の少将、人々すすめて菊もてなされけるに、加はるべきよしありければ」
 詞書から、のちに京極太政大臣と呼ばれた藤原宗輔がまだ中納言であった頃、菊をおびただしいほどに仕立てて鳥羽院に献上し、鳥羽殿の南殿の東面の坪庭に、余地もないほどに植えさせたこと、藤原公重が人々に勧めて菊を賞翫する歌を詠ませた折、西行にも加わるようにとのことがあったので詠んだ歌であることがわかる。わが君のお住まいの坪庭を菊が飾り立てていて、仙人の住む宮とでも言うべきであろうか、と詠む。
 菊は長寿をもたらす花とされ、仙境に咲くものとして詠まれた。また上皇の御所は仙洞とも呼ばれ、「仙の宮」には、菊の咲く仙境と鳥羽院の御所との両方が重ねられている。本巻の菊の歌がここから始まる。

 初句「君が住む」の「君」は、鳥羽院を指す。
 二句「宿の坪をば」の「坪」は、建物に囲まれた中庭をいい、詞書の鳥羽殿の南殿の東面の坪を指す。
 三句「菊ぞ飾る」は六音の字余りで、係助詞「ぞ」を受けて連体形「飾る」で結ぶ。菊が飾っている、の意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「仙の宮とや」の「仙の宮」は、仙人の住む宮の意で、上皇の御所を仙洞ということとも通じる。読み仮名の行では「やまのみや」と読んでいる。
 結句「いふべかるらん」の「べかる」は当然の助動詞「べし」の連体形、「らん」は現在推量の助動詞で、言うべきであろうか、と結んでいる。

つぼ:建物に囲まれた中庭
やまのみや:仙人の住む宮、ここでは上皇の御所を重ねる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
吹き過ぐる風さへことに身にぞしむ 山田の庵の秋の夕暮
次の歌
幾秋に我あひぬらん長月の 九日に摘む八重の白菊