糸鹿山時雨に色を染めさせて
かつがつ織れる錦なりけり
- 歌の意味
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糸鹿山は、時雨に色を染めさせて、ほんの少しずつ織りはじめた錦なのであった。
- 鑑賞
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秋歌 473
詞書「紅葉未遍」
詞書「紅葉未遍」は、紅葉がまだ山全体に行きわたっていないさまを詠む題である。糸鹿山は、時雨に木の葉の色を染めさせて、まだほんの少しずつではあるが、錦を織りはじめたのであった、と詠む。紅葉しはじめた山を、少しずつ織り上げられていく錦に見立てている。
地名「糸鹿山」の「糸」に、「染め」「織る」「錦」を縁語として結びつけ、山の紅葉を織物に見立てている。題の「未遍」を、錦を「かつがつ」織るという言い方で表しており、前歌が紅葉の始まりを空に問うたのに続き、紅葉が始まった山を詠んでいる。
初句「糸鹿山」は、紀伊国の歌枕である。「糸」が四句の「織れる」、結句の「錦」と縁語になっている。
二句「時雨に色を」は、時雨によって色を、の意で、時雨が木の葉を染めるとされたことを踏まえている。
三句「染めさせて」の「させ」は使役の助動詞で、時雨に色を染めさせて、の意である。
四句「かつがつ織れる」の「かつがつ」は、少しずつ、わずかに、の意で、題の「未遍」に当たる。「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
結句「錦なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、紅葉しはじめた山を錦に見立てて結ぶ。
かつがつ:少しずつ、わずかに、とりあえず
いとかやま:紀伊国の歌枕
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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いつよりか紅葉の色は染むべきと 時雨に曇る空に問はばや
- 次の歌
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染めてけり紅葉の色のくれなゐを 時雨ると見えし深山辺の里