さまざまの錦ありける深山かな
花見し嶺を時雨染めつつ
- 歌の意味
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さまざまな錦をそなえていた深山であることよ。春に花を見た峰を、時雨が紅葉の色に染めながら。
- 鑑賞
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秋歌 477
詞書「寂然、高野に参りて、深秋紅葉と云ふ事を詠みけるに」
詞書から、寂然が高野山に参って、「深秋紅葉」という題で歌を詠んだ折の一首であることがわかる。寂然は西行と親しく交わった歌人である。春には花の錦を見せた峰を、秋には時雨が紅葉の色に染めて、この深山にはさまざまな錦があったのだなあ、と詠む。春の桜と秋の紅葉とを、ともに山の錦として捉えている。
初句「さまざまの」は、本巻の巻頭の第二百五十四首「さまざまのあはれをこめて梢吹く」と同じ句である。巻頭では梢を吹く風にさまざまのあわれがこめられていたが、ここでは深山の梢がさまざまの錦をそなえており、巻頭と巻末近くとが呼応している。
初句「さまざまの」は、いろいろな、の意で、本巻の巻頭の第二百五十四首の初句と同じである。
二句「錦ありける」の「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形で、錦があったのだなあ、の意である。
三句「深山かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、深山であることよ、と言い切る。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「花見し嶺を」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、春に花を見た峰を、の意である。
結句「時雨染めつつ」の「つつ」は継続を表し、時雨が紅葉に染めながら、の意で、三句の錦の内容を倒置で後に示している。
にしき:色糸で模様を織り出した美しい織物、また美しいもののたとえ
みやま:奥深い山
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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梢あれば枯れゆく野辺はいかがせん 虫の音残せ秋の山里
- 次の歌
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限りあればいかがは色のまさるべき 飽かず時雨るる小倉山かな