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錦張る秋の梢を見せぬかな
隔つる事の闇を作りて

歌の意味
錦を張りめぐらしたような秋の梢を、霧は見せてくれないことだ。隔てるという闇を作り出して。
鑑賞
秋歌 480

詞書「霧中紅葉」
 詞書「霧中紅葉」は、霧の中の紅葉を詠む題である。錦を張りめぐらしたように美しく紅葉した秋の梢を、立ちこめた霧は見せてくれない、見る者との間を隔てる闇を作り出して、と詠む。紅葉を隠す霧を、昼の闇を作るものと見て恨んでいる。
 本巻の第三百九十九首で霧が月を隔てて見せないことを嘆いたのと同じく、ここでは霧が紅葉を隔てている。霧が隠すものが、月から紅葉へと移っている。

 初句「錦張る」は、錦を張りめぐらしたような、の意で、紅葉した梢の美しさを錦に見立てている。
 二句「秋の梢を」は、紅葉した秋の木々の梢を、の意である。
 三句「見せぬかな」は、見せてくれないことだ、の意で、「かな」は詠嘆である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「隔つる事の」は、隔てるという、の意で、霧が見る者と紅葉との間を隔てることをいう。
 結句「闇を作りて」は、闇を作り出して、の意で、霧を昼の闇にたとえ、三句の理由を倒置で後に示している。

へだつ:間に物を置いて隔てる、さえぎる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
紅葉葉の散らで時雨の日数経ば いかばかりなる色にはあらまし
次の歌
思はずによしある賤の住処かな 蔦の紅葉を軒に這はせて